読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『海辺のカフカ』は、読者に何も強制しない、優れた文章だ

今日も『海辺のカフカ』を少し読み返して、すごいと思った。

過去にぼくが引きこもって、自分と周りを傷つけまくっていたとき、この作品を読んで全く知らない世界を感じさせられたのを思い出す。

読み手の感覚に、何一つ強制感を与えさせない、洗練された瞑想にすーっと入らせる特殊な文体……。

傷つける行為は、『強制させる行為』だと言える。

傷つけられた報復として傷を負わせようとするのは、強制させる行為の連鎖だ。

海辺のカフカ』の文体には、そもそも強制がない。

「いいかい、戦いを終わらせるための戦いというものはどこにもないんだよ」と、カラスと呼ばれる少年は言う。
「戦いは、戦い自体の中で成長していく。それは暴力によって流された血をすすり、暴力によって傷ついた肉をかじって育っていくんだ。戦いというのは一種の完全生物なんだ。君はそのことを知らなくちゃならない」
(下巻 P.348)